いいなりヘアースタイルの結果
鏡を見て「あれっ?」と思うことが多くなりました。このところ、だんだん頭が薄くなってきたんですね。それで、ちょっと思い出したことがありました。
パーマをかけるとハゲやすくなるのか、という議論がよくあります。20代のころ、私はずっとパーマをかけていました。
自分ではどっちでもよかったのですが、理容室の先生が「あなたの髪質はクセ毛だから、こんなふうにパーマをかけてこうやって……」と、いろいろ説明してくれるので、まかせっきりにしていました。
それが、いまの床屋さんに変えた日に「このヘアースタイルはひどい。パーマはやめなさい」といわれて以来、もう10年もパーマをかけていません。
自分で自分のヘアースタイルにちゃんと関心をもたず、人のいいなりになって損をしてきたような気にもなりました。パーマをかけないほうがいまは自然に思えます。
もちろん、パーマでハゲるのか、ハゲないのかは個人差があると思います。でも、私のような細い髪質の人にとってはパーマはよくないそうです。たとえば、こんなことがありました。
理容室ではアシスタントの人がロットを巻きますよね。ときどき、こちらが「痛い」と感じるほど、がっしり引っ張って巻いている人もいるし、ああいうことが何年にも渡って続いていれば、ダメージがないはずがありません。
ところが、私の母は私が物心つくころからずっとパーマをかけていて、もう40年以上になりますが、てっぺんのつむじあたりがちょっと薄いだけで問題ありません。
これなどはやはり個人差の問題ですね。パーマのほかに遺伝もよく言われますが、自分に出るか出ないかははっきりしません。
友人は先天的に髪の毛がない人でこちらのサイト⇒「毛がない 原因」のように、悩んだ末に最新治療を受けました。
ふさふさほどではなく、一般的に言えば薄毛に入るくらいになりましたが、本人からすればそれでもじゅうぶんにうれしいことなのだそうです。
治療が痛いとか、痛くないとか、いろんな心配があったようです。でも、クリニックの先生が実際に体験談を載せていることで安心できたのだとか。
たいへんな悩みをもつ人もいることですから、自然に後退した薄毛くらいなら神経質にならず、とうとう来たかなという開き直りも必要なのかもしれませんね。
人のピンチを救ったのに
2日間続けて国民のピンチを救った私。
1日めはお金を落とした青年に、2日めは財布を落としたおじいさんに声をかけ、もう人生でこれ以上ないという善行を重ねた私です。
「落としたお金をこっそりもらってたら、いくらになったかな」「バーゲンで久しぶりに服を買えたのになあ」なんて後悔など、これっぽっちもしていません。
いや~2日続きでこんなことがあるのも珍しいものです。なにか、ご褒美で自分にとてもいいことが起こりそうな気がしました。
ほがらかな気分でスーパー銭湯を出た私。なんだかお腹もすいちゃったし、ラーメンでも食べて帰ろうかな、と思ったそのとき。
脳裏に突然、ある映像が浮かびました。
昨夜作ったばかりのカレーがあった!
夏なのに冷蔵庫にも入れず、今朝も火を入れるのを忘れてしまった!時計を見ると、放置したまま10時間は経過。
ああ……あんなに時間をかけてつくったのに……トマトも入れて、ちょっとおいしくなってたのに……。
でも、まだわかりません。希望はあります。ネガティブになって打ちひしがれることなんかないんです!
自転車を飛ばしてあわてて帰りました。
部屋に飛び込んで、いそいで鍋の蓋をとりました。
中では白と青のカビの胞子が、すでに産声をあげていました。
善行のあとに
先日、私は2日間続けて国民のピンチを救いました。これは胸を張って言います。
まず、最初の土曜日。
そこは明治神宮の軽食コーナーでした。ニヤけた顔で恋人のためにソフトクリームを買っていた青年が、重なった3千円ほどの紙幣をポケットから落としました。
すかさず声をかける私。いや、正直に言うとちょっと葛藤してから声をかけました。
「お金、落としましたよ」
青年はていねいに頭を下げて、私に感謝してくれました。
さらに翌日の日曜。
スーパー銭湯の更衣室でドサッと大きな音をさせて、財布を落とし、気づかずに出て行こうとするおじいさんに声をかけました。
「財布、落としましたよ」
すると、おじいさんは「あっ」と昔のジャイアント馬場がチョップをする前みたいなしぐさをして言いました。
「ありがとね。まったく、歳とるとこれだからね、ハハハ。いや、どうもありがとう。いいお湯だった……」
もうおじいさんったら。「いいお湯だった」にはもちろん、私への感謝も含まれてるんでしょ?
正確に言い換えれば、「いいお湯といい人(私)に会えてよかった……」ってことなんでしょ?もう、ちゃんと言えばいいのに~。
私はほくそ笑んで、自分の善行が人に幸せを運んだ喜びをかみしめていました。
そのあと、あんなことになるとも知らずに……。
ご老人たちのスーパースロー
東京都大田区の蒲田温泉。洗い場の隅のほうに行くと浴槽のあいだは唯一、幅がせまくなっていて、幅1メートルほどしかありません。
ふつうの成人が2人鉢合わせしたら、おたがいに体をちょっとななめにすればラクに通り抜けられますが、老人の場合、そうはいきません。
反対方向からやってきた彼らがこの場所で対面すると、こんな感じになります。
おたがいの姿が目に入る。
老人A・老人B 「!」
どうするんだ? と視線を泳がせ、2秒。目くばせしあうあいだに、また2秒。どちらかが行動開始の意思を見せ、動き出すまでに、2秒。行動そのものに、10秒。
なので、運悪くご老人たちのあとにならんでしまったときには、あたたかい気持ちでこれらを見守る正しいマナーを、身につけておかなければなりません。
でも、これで終わりではないのです。ひとりが浴槽に入るまではもっと時間がかかります。
右(左)足をあげるのに、3秒。浴槽にその足を入れるのに、3秒。さらに反対の足をあげるのに、体勢が不安なために4秒。その足を入れるのに、4秒。さらに全身をゆっくりとお湯に沈めるのに、6秒。
そのあいだ、すべて無言。ときどきは「う~」という、かすれた声も響きます。
そして、入浴。入っている時間はとほうもなく長いのです。
温泉は黒いので、骨ばったシワシワの体からなにやらダシが出ているようでもあります。
歳月が刻まれた皺だらけの顔は、茹でられてゆくカメを思わせます。ともあれ、蒲田温泉を愛好するご老人の長寿を祈りたいものです。
蒲田温泉で見かけるスローモーション映像
東京都大田区の蒲田温泉。名前のとおり、蒲田にあります。でも、JRよりは京急蒲田が近いです。京急蒲田といえば、きれいなこじゃれた駅になりましたね。
京急線が高架になるので、もう何年もずっと工事していました。だから、私には工事のフェンスがずっと続いているのが、あたりまえのような景色になっていました。
それが一気に取り払われたとたん、なんだかべつの街になったかのような寂しさもちょっと感じました。
蒲田温泉は温泉という名前ですが、銭湯です。しかも、銭湯料金でサウナが入れる、コストパフォーマンスのいい銭湯です。
温泉は東京名物の黒湯温泉で、ほぼコーヒー色をしています。お客さんはだいたい地元の人達ですが、日曜日などはほかの土地から来る人もいます。
この蒲田温泉、年齢では圧倒的に50代以降が多いのですが、昔からきている80代のおじいさんもいます。そんなおじいさんたちの動作はとてもゆっくりです。
洗い場の隅と浴槽のあいだは唯一、幅がせまくなっていて、幅1メートルほど。
ふつうの成人男性・女性は2人で鉢合わせしたら、おたがいに体をちょっとななめにすればラクに通り抜けられるのですが、おじいさんたちの場合、そうはいかないのです。